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機械式時計のパワーリザーブとは?

一般的に電池式の時計は電池残量が無くなると時計の針が止まってしまいます。
それに対して機械式時計はどのくらい駆動し続けることが出来るのでしょうか。今回は機械式時計の駆動時間“パワーリザーブ“について取り上げてみました。

今回は以下の内容でお送り致します。

1.パワーリザーブとは
2.手巻き時計とパワーリザーブ
3.自動巻時計とパワーリザーブ、便利な機械“ワインディングマシーン”
4.パワーリザーブインジケーターとは
5.ロングパワーリザーブ搭載おすすめモデル
6.まとめ

1.パワーリザーブとは

機械式時計を選ぶ際に重要なポイントとして考えられている項目の1つに
“パワーリザーブ”があります。

パワーリザーブとは機械式時計のゼンマイを巻き上げた状態から、完全にほどけて時計が止まってしまうまでの駆動時間を指します。

よくモデルのスペック解説で「パワーリザーブ~時間」という表記を目にすることがあると思いますが、この場合はゼンマイを最大に巻き上げた状態から何時間でゼンマイがほどけ切り、時計が止まるのか。という事を意味しています。

では、ゼンマイが巻き上がる時の時計内部の仕組みは
一体どのようになっているのでしょう。

簡単に表現すると、一般的に機械式時計は、時計内部の香箱と言われる筒状の箱の中におさめられている主ゼンマイが動力源となって動いています。

リューズを巻くと歯車の輪列を経由して香箱に伝わり、香箱内部に渦巻き状におさめられている主ゼンマイが巻き上がります。
機械式時計は、この巻き上げられた主ゼンマイがほどける力が輪列に伝わり、
時分針を動かしています。

ここでゼンマイが一気にほどけてしまうと正確に時を刻むことが出来ません。

歯車が同じスピードで回転し続けるためにガンギ車、アンクル、てんぷ、ヒゲゼンマイからなる調速脱進機を備えることで、
正確に時を刻んでいくことが出来るのです。

ここまでパワーリザーブと時計内部の仕組みについて簡単に触れました。

つぎに、パワーリザーブと密接に関係している
主ゼンマイの巻き上げ方法についてフォーカスしてみます。

一般的に機械式時計は主ゼンマイの巻き上げ方法によって、
手巻きと自動巻きに分けられます。

それぞれの特長とパワーリザーブについて見ていきましょう。

2.手巻き時計とパワーリザーブ

手巻きの場合は、リューズから主ゼンマイをフルに巻き上げ、
そのゼンマイがほどけ切って止まるまでの時間の長さが
パワーリザーブの長さです。

例えばパワーリザーブが40時間の場合、
ゼンマイをフルに巻き上げた状態から、追加巻き上げ無しで、
そのまま40時間は時計が動き続けることになります。

手巻き式時計を選ぶ際のメリットとしては、
自動巻きに搭載されているようなローターが無いため、
シースルーバックケースの場合は、ローターが邪魔をすることなく
ケース裏側から時計内部の美しい機械を眺めることが出来ます。

そして、ゼンマイを巻き上げる行為そのものを一日の楽しみにされている
時計愛好家の方も多くいらっしゃいます。

先日のブログ記事でも投稿させていただきましたが、
巻き上げの感触を毎日楽しむことで時計に愛着がわいてくるということです。

そのブログは以下URLからご覧いただけます。
https://www.kamine.co.jp/blog/kamine-staff/2022/07/02/temaki/

パワーリザーブが長くなると、時計が動いている時間も長くなり、
その分巻き上げる頻度も減ります。

そして、パワーリザーブが長くなると精度が安定しやすくなります。

そして手巻き式時計が好きなのだけれど、時間を止めることなく使いたい
といった場合には、ロングパワーリザーブモデルがお勧めです。

後ほどロングパワーリザーブモデルのご紹介をさせて頂きます。

3,自動巻き時計とパワーリザーブ、便利な機械“ワインディングマシーン”

次に、自動巻きモデルについて簡単に触れてみましょう。
手巻きモデルと何が違うのでしょうか。

基本的に自動巻き時計とは、機械式のムーブメントに内蔵された“ローター”と
呼ばれる半円形のパーツが日常の腕の動きにあわせて回転することで、
その動きが輪列を経由し、主ゼンマイを巻き上げてくれます。

手巻き式時計との違いを簡単に表現すると、
手巻き式時計が手でリューズを操作しゼンマイを巻き上げる巻き上げ方法。
対して、自動巻き時計は、手巻き機能も備えていますが、
日常動作により時計内部のローターが回転して
ゼンマイを巻き上げてくれるため、
自動的に巻き上げてくれるという大変便利な機能がついているのです。
ローターが回転することにより、ゼンマイを巻き上げてくれるため、
時計は動き続けます。

自動巻きの場合のパワーリザーブとは、
ゼンマイがフルに巻き上がった状態から、
腕に着けずに置いた状態で動き続ける駆動時間の長さを指します。

自動巻き時計を選ぶ場合のメリットとしては、
前述のとおり手でゼンマイを巻き上げる手間が省ける事、
特に毎日のように時計をご使用になる方は、
手巻き機能をほぼ使うことなく時計が動き続ける状態となります。

手巻きのメリットと真逆ではありますが、
自動巻きは実用性重視の方におすすめです。

毎日身に着けない場合は“ワインディングマシーン”もしくは“ワインダー”と
言われる時計を回転させて、
自動でゼンマイを巻き上げてくれる機械に時計を入れておくことで、
時計を使用する際ゼンマイが巻き上がっている状態で
着け始めることが出来ます。

※ワインダー詳細につきましては、
是非店頭スタッフまでお問い合わせ下さいませ。
各種お取り扱いしております。

4.パワーリザーブインジケーターとは

パワーリザーブの駆動時間が残り何時間なのかという点について、
通常の時計では知ることが出来ません。

例えばパワーリザーブが42時間なのでまだまだ動くだろうと思っていたら、
実際は巻き上げ不足で、30時間で止まってしまった、

自動巻きなので手に着けていると時計が動き続けるものだと安心していたら、
その日は事務仕事でほぼ腕を動かしていなかったため
ローターが回転しておらず急に止まってしまった、
というようなことをよく耳にします。

そのようなときに便利な機構が“パワーリザーブインジケーター”です。

“パワーリザーブインジケーター”を一言でいうと、
巻き上げられたゼンマイがほどけきるまでの時間
(=あとどれだけの時間動き続けるのか)を表示するものです。

パワーリザーブインジケーターは、機械式時計のゼンマイの巻き上げ残量を
確かめるだけでなく、手巻きのゼンマイがフルに巻き上がっているかどうかの
確認をする際も大変役に立ちます。

インジケーターを確認し、パワーリザーブが減ってきたら巻き上げるようにすると、時計を止めることなく動かし続けることが出来ます。

そして手巻き時計の多くは、
ゼンマイを完全に巻き上げると巻き止まりがあります。
さらにそれ以上力を加えてしまうと
ゼンマイが切れてしまう恐れがありますので、
インジケーターで完全に巻き上がっているか確認できるのはとても便利ですね。

【インジケーターの表示方法】

インジゲーターは文字盤に記載されているモデルが多いですが、
ケース裏のムーブメント内に配置されているモデルもあります。

さらには、残量が少なくなってきたら
色が変わって知らせる表示方法もあります。

それでは写真で確認していきましょう。

扇形の表示

こちらのモデルは文字盤右側に「AUF」「AB」と表示があります。

針がAUFにある時はフルにゼンマイが巻き上がっている状態を示し、
ABに近づくに連れて残量が減っていることを表します。
(アップ/ダウンの意味です。)

ケースバックから見えるムーブメント上の表示

こちらのモデルはケース裏のムーブメントパワーリザーブが表示されています。

直線で示すパワーリザーブ表示

数字と色の変化で知らせる

こちらのモデルは文字盤の6時位置のインジゲーターで
パワーリザーブがあと何日持つのかを表示し、
巻き上げ残量が少なくなってくると
3時位置の楕円の色が黒から赤へ変わることで知らせてくれます。

5.ロングパワーリザーブ搭載おすすめモデル

多くの機械式時計のパワーリザーブは
2日間程度で時計の針が止まってしまいます。

例えばお仕事で使用される場合、
パワーリザーブ2日程度ですと週末外している間に止まってしまい、
月曜日に時刻調整が必要となり、
忙しい方にとって朝から時刻を合わせるのは大変ではないでしょうか。

パワーリザーブが3日以上確保出来ればこのような問題もクリアできます。

時計技術が向上している近年、
駆動時間を長く確保できる“ロングパワーリザーブ搭載モデル”が
続々と発表されていますので、ご紹介させて頂きます。

■ジャガールクルト

マスター・コントロール・ジオグラフィーク

こちらのモデルは自動巻で70時間のパワーリザーブが備わっています。

左上にある扇状の表示がパワーリザーブインジケーターです。

何分の何という表示方法で、0に近づくと分かりやすく赤字になっております。

こちらのモデルは海外に行かれる際、
現地時間と自国時間の両方を瞬時に把握できる表示、
そして2時位置には針で示すカレンダー表示もあり、
特に海外旅行に行かれる際は大変便利なモデルです。

ケース径40mm

¥1,707,200込

■ウブロ

ビッグバン・メカ10ブラックマジック

メカ10はその名の通りパワーリザーブがなんと
約10日間という長さを誇るモデルです。

手巻き式ではありますが、約10日に1回ゼンマイをフルに巻き上げれば
動き続けてくれます。

前述のとおり、6時位置の数字がパワーリザーブの残日数を示します。

枠の中に3という数字がある場合は、残り約3日間で止まってしまいます。

パワーリザーブが残り少なくなってくると
3時位置にある楕円の色が黒から徐々にと赤へと変わっていき、
視覚的にも巻き上げを促してくれます。

ケース径:45mm

防水10気圧

¥2,816,000込

■ウブロ

ビッグバン・インテグレーテッド・インディゴブルーセラミック

メカ10に続き、ウブロよりインテグレーテッドをご紹介させて頂きます。

こちらのモデルは、自動巻きで72時間のパワーリザーブが備わっているので、
ゼンマイがきちんと巻きがっている状態であれば
週末に時計を外しておいても月曜日に止まっているという事はなさそうですね。

色鮮やかなインディゴブルーは250本限定。

その他様々なカラーバリエーションがあります。

6.まとめ

これまで“パワーリザーブ”についてお話をさせて頂きましたが、
近年ますます長いロングパワーリザーブモデルが発表されています。

中にはA.ランゲ&ゾーネの“ランゲ31”のように約31日間という
とんでもなく長いパワーリザーブを誇るモデルも存在しています。

そしてパワーリザーブを長くするために各社様々な研究がなされています。

・主ゼンマイがおさめられている香箱を2つ以上に増やすことで
 主ゼンマイの長さを確保する

・シリコン製の脱進機を搭載することで摩耗を低減させ、
 エネルギーロスを最小限にする

・時計の振動数を下げることで使用エネルギーをパワーリザーブへもっていく

など、複雑な機械式時計でありながらどこまで実用性をあげ、
そして高精度を保つことが出来るのか今後が楽しみです。

おすすめモデルでもご紹介させて頂きましたウブロですが、
今回一堂に多くの商品をご覧頂ける機会があります。(お申込制)

是非お気軽にご来場くださいませ。心よりお待ちしております。

HUBLOT SPECIAL DAY

とき:2022.7.31 Sun. 11:00-19:00

ところ:TOOTH TOOTH FISH IN THE FOREST

     神戸市中央区波止場町2-8(メリケンパーク入口)

【お問い合わせ・お申し込み先】

カミネ旧居留地店 078-325-0088

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篠田哲生

最高峰の時計ブランド「パテック フィリップ」の魅力とは何だろうか?
数々の仕事を通じてこのブランドに出会い、魅了され、遂にはユーザーとなったライター、ウォッチディレクターの篠田哲生氏が、自身の目と経験から感じた、"パテック フィリップのこと"について語る。

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