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「世界三大時計」その魅力と人気モデル

メトロポリタン美術館
ルーブル美術館
エルミタージュ美術館

「世界三大〇〇」という言葉を耳にした事があると思います。

例えば
世界三大美術館(メトロポリタン美術館 ルーヴル美術館 エルミタージュ美術館)
世界三大河川(アマゾン川 ナイル川 ミシシッピ川)
世界三大美女(クレオパトラ 楊貴妃 小野小町)
世界三大料理(中華料理 フランス料理 トルコ料理)

ですが、これらはあくまで定説として、社会に流布しているものなので、
具体的な数値に基づくランキングトップ3と必ずしも一致するとは限りません。
日本の文化圏内だけで広まっている説も含みます。

そんな世界三大と呼ばれる物が
時計業界においても存在するのはご存じでしょうか?
「何を今さら?」と思う方も多いとは思いますが・・・
是非聞いていただければと思います。

さて、巷で囁かれている世界三大時計ブランドとは・・・

時計の聖地スイスで生まれた
「パテック フィリップ」、「オーデマ・ピゲ」、「ヴァシュロン・コンスタンタン」です!!

「世界三大時計ブランド」の他に「雲上ブランド」や「御三家」等と呼ばれる事もあります。
ではなぜこの3つのブランドがこの様な呼ばれ方をしているのか?
3ブランドに共通している事が大きく3つあります。

今回のブログは以下の内容でお送り致します。
是非気になる箇所だけでも読んで頂けますと幸いです。

①世界三大時計ブランドに共通する点
②世界三大ブランドの紹介

①世界三大時計ブランドに共通する点

ここでは、世界三大時計ブランドに共通する素晴らしい点をご紹介致します。

・品質の良さ

まず最初に共通する点は隅々に渡る品質の高さです。

パテック フィリップ、オーデマ・ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンは、
素材や部品のひとつひとつにもこだわりを持って時計作りをしています。
ケースに使用されるステンレススチールをはじめ、
K18ゴールドやプラチナ素材などは、選び抜かれた高級素材を使用しています。

・高い技術力

続いては高い技術力

三大ブランドはそれぞれ自社一貫生産に力を入れています。

ムーブメントの部品の製造から時計の組み上げまでを、
自社一貫生産しているメーカーのことをマニュファクチュールと呼びます。

自社で完結させる事で他社製品の部品を使うよりも効率よく生産管理でき、
より精度の高いムーブメントを製造できるため、
この3社もいち早くマニュファクチュール体制を取りました。

さらに多くのモデルが『ジュネーブ・シール』を獲得しており、
世界三大時計ブランドの技術力の高さが伺えます。

このジュネーブ・シールを取得するためには
スイスのジュネーブ州で時計を製造する必要があり、
それ以外の地域で作られた時計は取得することが出来ません。
認定を得るための精度においては「クロノメーター」と同基準ですが、
ジュネーブ・シールの認定においては精度以外にも
製造方法や仕上げにも厳しい基準が設けられており、
その基準をクリアしなければなりません。

オーデマ・ピゲに関してはジュネーブ州で生産されていない為、
同シールを取得しているモデルは無いものの、
職人が手作業で製作することにこだわり、
機械では出せない精度や磨き模様を実現し、
超高品質の生産体系を整えています。
また、1986年にトゥールビヨンを自動巻き時計に搭載したのは
オーデマ・ピゲが世界初で、クロノグラフ、永久カレンダー、ミニッツリピータ―等の様々な複雑機構を得意としている事からも高い技術力が伺えます。

・長い歴史による伝統

3大ブランドと呼ばれる所以は歴史の長さにもあります。
それぞれの創業は
パテック フィリップ・・・1839年
オーデマ・ピゲ・・・1875年
ヴァシュロン・コンスタンタン・・・1755年

どのブランドも優に100年以上は超えていますね。
特にヴァシュロンは驚愕の267年!!
1度も製造が途絶えずに運営を続けている時計ブランドとしては
世界最古となります。
日本では江戸時代。徳川9代将軍の家重の時代で絶賛鎖国中ですね。

②世界三大ブランドの紹介

【パテック フィリップ】

パテック フィリップは1839年の創業以来『世界一の時計を作る』という理念の基、常に完璧なクオリティを求め続けながら、
時計製作の技術を大きく進歩させた最高峰のブランドです。

ヴィクトリア女王やローマ教皇から始まり、ブッシュ大統領や今川天皇など、
国や年代を問わず幅広い偉人達から愛される時計を数多く生み出しています。

また、1932年に創業者の一族がメゾンの所有権をスターン家に移譲して以来は、その遺志を引き継いで一貫した家族経営を守り続けています。
そのため、技術革新と芸術性を追求し続けながらも、
創業当時からの歴史と文化が完璧に継承されている
数少ないブランドであるといえます。

パテック フィリップの最大の特徴は、
時計製作において圧倒的な技術力の高さを誇っていること。
昨今では製造技術の飛躍的な発達により、
以前より複雑機構を手掛けるブランドが増えつつありますが、
最終的に採算が合わなくなったり、あるいは複雑ゆえに機構に厚みが出てしまい、任意のデザインにムーブメントを収めきれないような問題が出たりします。しかし、パテック フィリップはパーペチュアルカレンダーやミニッツ・リピーターなどといった、数々の超複雑技巧を駆使した名機を最前線で世に送り出すだけでなく、グランド・コンプリケーションの時計をシリーズ化、そして外装の美しさにおいても時計史に残る最上級のクオリティを維持し続けています。
一つ一つの時計が纏う高級感と美的完成度の高さも、
このブランドが持つ厳格の現れでもあるのです。

また、パテック フィリップはムーブメントの全てのパーツに徹底的な磨き上げを行います。それらは全て職人たちの手仕事で行われています。
装飾技術を含め50~200の製作工程があるにも関わらず、
数ミリ単位の微細な作業は今でも人の手によって丁寧に施されています。

それに加え、2009年にはジュネーブ・シールよりはるかに品質基準が厳しいパテック フィリップ・シールを制定しブランド自らを厳格に律することで、
革新性と美しさだけではなく、他に類を見ない高品質と信頼性も追求しました。また、丁寧な磨きが施された部品は摩擦を抑える効果があるため、
時計の寿命の延びにも繋がります。

このような職人達による最上級の工芸技術によって、
183年もの長い歴史を形作っていったのです。

【代表作 ノーチラス】

パテック フィリップの代表モデルはいくつかありますが、
その中でも今回はブランド初のスポーツウォッチである「ノーチラス」
をご紹介いたします。

ノーチラスの名称は、SF小説の名作『海底二万里』に登場する潜水艦の名称に由来しているといわれています。
デザインを手掛けたのは下記のトピックにも登場する名手ジェラルド・ジェンタであり、潜水艦の船べりについた小さな窓をイメージして作られた時計となっています。
カジュアルからフォーマルまで幅広い装いに合わせられる外装は、
丸みを帯びた八角形のベゼル、横ストライプの水平エンボスを施したダイヤルの特徴的なデザインになっており、
1976年の誕生から40年以上経過した今でも絶大な人気を誇っています。

また、一般的な高級時計は金などの貴金属で作られることがほとんどでしたが、ノーチラスは全体にステンレススチールを使用しています。
そして薄型のケースでありながら、120m防水を備えているのも大変画期的な時計として話題になりました。
それぞれの辺が緩やかな曲線を描き、洗練された美しさを纏いながらも、
実用性も誇る同シリーズは、パテック フィリップならではの風格に満ちた
高級スポーツウォッチの代表格として挙げられるようになりました。

【オーデマ・ピゲ】

スイス・ジュラ山脈のル・ブラッシュで創業し、
現在も同じ地に拠点を置く老舗メーカー。

1875年に創業して以降、140年に渡り途切れることなく家族経営を続けてきた名門時計ブランドです。

この町でジュール=ルイ・オーデマという一人の青年が
時計工房を設立したことからオーデマピゲの歴史は始まります。

オーデマは時計工房設立前の修行時代から技術の高さには定評があり、
周囲から一目置かれる存在でした。
そのため、工房を設立してからほどなくすると有名時計メーカーから製造を依頼されるようになり、その仕事量はすぐに彼一人の手では負えないものになってしまいます。

人手が足りなくなったオーデマは、
そこで後のブランド名になったもう一人の人物に一緒に働こうと声を掛けます。それが、エドワール=オーギュスト・ピゲです。

オーデマはピゲと一緒に働くようになってからさらに精巧な時計を作れるようになり、1882年にはついに『オーデマピゲ』のブランドを作って独立することを決意します。

ただし、独立するにあたって課題だったのは、
自社が生み出す複雑なムーブメントを説明するための営業担当の不足でした。
2人で話し合い、オーデマはムーブメント開発に専従し、
一方のピゲは営業を担当することにしました。

この役割分担が見事にハマり、
1888年にはパリやニューヨークなど世界を代表する大都市へ
次々に支店を出すほどに成長していきます。

2人が持っていた時計作りのスキルや経営者としての感覚は創業者一家による経営によって子供たちにも順当に受け継がれ、
1972年にはオーデマ・ピゲの代表作ともいえる
ロイヤル オークの誕生に一役買ったのです。

・ロイヤルオークとは

オーデマ・ピゲの代表作といえばロイヤル・オーク!
さらに今年はロイヤル・オーク誕生から50周年という事で
記念モデルが現在製造されており、さらに盛り上がっております。
弊社でもお客様からの非常に多くのお問い合わせを頂いておりました。
発表から2~3日間は本当に電話が鳴りやまなかったのを覚えています。

そんな爆発的人気のロイヤルオークですが、
どのように誕生したのか?人気の秘密は何なのでしょうか?

ロイヤルオークは1972年に当時のオーデマピゲの最高経営責任者であったジョルジュ・ゴレイの斬新な発想から生まれました。

ゴレイはスイスのバーゼルで開催される世界最大級の時計の見本市、
バーゼルワールドで今までとは違う新しい時計を発表したいと考えていました。そこで、時計デザイナーのジェラルド・ジェンタにデザインを依頼したところ、ステンレススチール素材を用いた腕時計、
つまりロイヤルオークが誕生したのです。
従来の高級時計はすべて金無垢であるという概念を打ち破ったロイヤルオークはそのデザイン性の高さから人気を呼び、
現在ではラグジュアリースポーツモデルの祖と評価されています。

ジェラルド・ジェンタは、実はオメガのコンステレーションや
パテック フィリップのフィリップのノーチラスといった
数々の有名モデルを生み出した人物でもあります。

世界3大時計と呼ばれるブランドの2つのブランドに大きく関わっているジェラルド・ジェンタさん。
めちゃくちゃ凄く無いですか?まさに時計界の巨匠!
「時計界のピカソ」とも呼ばれているそうです。

オーデマと同じくスイス生まれのジェンタは、
当初ジュエラーとして修業していましたが、
23歳のときに時計デザイナーへと転身したことがきっかけで飛躍を遂げます。
生来の才能が開花したジェンタは、1960年代にオメガのコンステレーションのデザインを担当したことで一躍世間に知られるようになりました。

その後も、どのブランドにも属さず、フリーランスとして複数のブランドにまたがって活躍した結果、ゴレイの目にとまってロイヤルオークのデザインを依頼されたのです。

ロイヤルオークはラグジュアリースポーツモデルの祖と評価されていますが、その成功はジェンタという孤高の天才デザイナーの存在なくしてはありえませんでした。ロイヤルオークの成功でさらに名声を得たジェンタはその後も活躍を続け2011年に亡くなりますが、彼が手掛けた腕時計の数々は現在でも高く評価されています。

ロイヤルオーク誕生秘話はここまでにして、
では一体現在のロイヤルオークはどんなもので、何が人気なのでしょうか?

【代表作 ロイヤルオーク】

それは八角形の力強いベゼルとそのベゼルに打ち込まれたビス。
薄型ケースでつけやすいだけでなく、高級感があってスポーティ。
なんと50年前とほぼ変わらないデザインでも全く古臭さは感じない。
まさに時代の先駆者。

パーツの面にヘアラインやポリッシュの仕上げを行うことで立体感を表現し、
メリハリのある輝きを作りだす仕上げは今も難度は変わらない。
ケースとブレスレットは製造だけでも約5時間。
さらに162の工程があるという仕上げ作業にも同等の時間がかかるので、
ひとつの時計の外装を作るだけでも、最低でも10時間もの時間を要する。
さらに「タペストリー」と呼ばれるダイヤル装飾もハイレベル。
この模様は古いギヨシェマシンによって、ひと筋ずつ彫られているだけでなく、光を綺麗に反射させるために台形型に。
とにかく手の込んだケースやブレスレット、ダイヤルを作っているため、
ロイヤル オークを量産すること非常に難しいのです。

現在の技術であれば工程を簡略化する事で
生産本数を増やす事も出来ると思います。
しかしオーデマ・ピゲは、簡略化することは選ばず、
あくまでも理想を追い求める。
それも人気である理由の一つなのかもしれません。

こちらは「ロイヤル オーク」誕生50周年を記念して行われたイベント『ロイヤル オーク 時を刻んだ50年』に弊社のスタッフが参加した時の模様です。

というペルラージュ仕上げという工程でローターに回転するゴム砥石を押し当て、鱗状の連続模様をつけています。

自動機械で行うこともできますが、砥石表面の状態を管理するのが難しいので、荒い目になってしまうそう。
一つ一つ確認しながら手作業で行う様です。
凄く細かくて繊細な作業ですね。

【ヴァシュロン・コンスタンタン】

一見しただけでは読み方に戸惑ってしまうVacheron Constantinのブランド名。現在はフランス語読みの「ヴァシュロン・コンスタンタン」が
一般化されています。
英語読みやドイツ読みでは「バセロン・コンスタンチン」の発音が近く、
以前は日本の時計雑誌でも「バセロン・コンスタンチン」として紹介されていたそうです。今まで間違った読み方だと思っていました(汗)

1755年の創業から一度も途切れることなく現在に至った世界最古の時計ブランドというのが一番有名な話ではないでしょうか。

創業以来、世界大戦やクォーツショックといった荒波の中にあっても一度として経営を絶やしておらず、このことから世界最古の時計メゾンの一つとしての呼び声も高いですね。

創業者は、時計師ジャン=マルク・ヴァシュロン氏です。1755年に工房をスイス ジュネーブに開設したことから、その歴史は始まりました。

その後、ジャン=マルク・ヴァシュロン氏の孫ジャック・バルテルミー・ヴァシュロン氏が経営を引き継いでいた1819年、フランソワ・コンスタンタン氏が経営に参画し、現在の社名「ヴァシュロン・コンスタンタン」が時計業界に誕生することとなりました。

ヴァシュロンといえばもう一つ特徴的なのがマルタ十字ですね。
このマルタ十字は1880年に誕生。
マルタ騎士団に代表される宗教騎士団のシンボルマークとしても知られていますが、実は機械式時計の主ぜんまいを格納する香箱の、カバーに備わっていたパーツがこれと酷似していたことからブランドロゴとして採用に至った様です。

なお、ヴァシュロン・コンスタンタンが評価されるのは、こういった伝統や華やかな歴史はもちろんのこと、その伝統に裏打ちされた高度な時計製造技術が背景としてあります。

複雑機構(コンプリケーション)ウォッチを1790年というかなり早い段階で製造しているだけあり、このジャンルには一家言持ってきました。

ヴァシュロン・コンスタンタンが随一の歴史・屈指の時計製造とともに評価されるもう一つの理由として、「老舗でありながら今なお革新的」ということが挙げられます。2018年には「モダンなのにクラシック」なフィフティーシックス、2020年にはレディース専用ラインとなるエジェリーを発表。

老舗の名に甘んじることなく攻めの姿勢を崩さないのが、ヴァシュロン・コンスタンタンのヴァシュロン・コンスタンタンたる所以でしょう。

3大ブランドに共通する事ではありますが、永久修理を掲げています。永久修理は文字通り、創業から今に至るまで販売した自社製品の修理を、今後も永続的に請け負う、というサービスです。この永久修理を採用するブランドは3大ブランドの様な名門に限られます。

【代表作 オーヴァーシーズ】

スポーツラインのオーヴァーシーズ。1996年に誕生しました。
エレガンス・クラシックの多いヴァシュロン・コンスタンタンの中では、
唯一スポーティーデザインなシリーズとなります。

3大ブランドで比較するとラグスポ時計の中では
オーヴァーシーズはかなり遅い登場です。

しかしながら、他社とは一線を画します。
どういうことかと言うとオーヴァーシーズは、
同社ならではの伝統と高い設計力をふんだんに発揮しつつも、
強烈な個性をも有するのです。

最もその個性が顕著に表れているのがデザインです。
オーヴァーシーズは「マルタ十字をアレンジしたベゼルおよびブレスレット」を持っていることが何よりの特徴ですが、
よく見ると、ブランドのアイデンティティがそのまま時計に姿を変えているとも捉えられるわけです。

ケースは優美なラインを描いており、
ラグがブレスレットとシームレスになっていることで、
流れるような曲線美を堪能できることも魅力。
非常に薄型であるため、きちんと「ラグジュアリー・スポーツ」の王道にのっとっているのです。

オーヴァーシーズは1996年の誕生以来、
第三世代までのアップデートを遂げました。

世代を経るごとにどんどん評価が高くなり、
最新世代で人気に火が付いたと大きく取り沙汰されました。

世界三大時計と言われる所以がお分かりになって頂けたでしょうか?
どのブランドも長い歴史と素晴らしい技術力、伝統を大切にしつつも今なお進化し続けようとする姿勢。本当に素晴らしいです。

そんな三大ブランド全て取り扱いのあるのがカミネです。
それも改めて考えてみると本当に凄い事だなと思いました(笑)

パテックフィリップはトアロード店2F、オーデマ・ピゲは元町店、ヴァシュロン・コンスタンタンは旧居留地店でそれぞれ展開しております。ご紹介したモデルは入手困難な状況ですが、それぞれのブランドの世界観表現したフロアでお客様のご来店をお待ちしております。

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COLUMNコラム

篠田哲生

最高峰の時計ブランド「パテック フィリップ」の魅力とは何だろうか?
数々の仕事を通じてこのブランドに出会い、魅了され、遂にはユーザーとなったライター、ウォッチディレクターの篠田哲生氏が、自身の目と経験から感じた、"パテック フィリップのこと"について語る。

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