Patek Philippe Floorブログ

パテック フィリップ社を救った「96」モデル

1930年代、ジュネーブのパテック フィリップを世界恐慌による経営難から救い、トップブランドに上り詰めるきっかけにしたのが、スターン兄弟の生み出したカラトラバコレクションの通称「96」シリーズでした。

幾度かモデルチェンジしながら、常に不動の立ち位置を誇る人気モデルRef.5196。 先日、こちらの生産終了が発表されました。

Ref.5196は現行では数少ないイエローゴールドとプラチナを
ケース素材のバリエーションに擁したモデルでした。

写真のプラチナモデルはブレゲ数字のアプライド、
リーフ針、レイルウェイ・スモールセコンドで文字盤がデザインされ、
古典的印象を色濃く残した魅力的なモデルで、生産数はごくわずか。

Ref.5196の現行モデルはケース構造が発表された頃からの長い歴史を踏襲していることと、裏蓋がソリッドゴールドのケースバックというところが特徴です。

実際Ref.5196の発表以降のモデルはサファイヤクリスタルのシースルーバックが中心で、現在では殆どのモデルにシースルーバックが採用されています。

このRef.5196は型番が示す通り1932年に発表された初代カラトラバ、
Ref.96系の直系です。(当時はこの2ケタ品番でした)

1950年代に発表されRef.96のデザインを受け継ぎながらケースを防水化したRef.2545というモデルもあります。

更にパテック フィリップが1980年代後半にオリジナルのRef.96のデザインを
復刻し登場させたのがRef.3796です。
初代96とほぼ同じサイズのこのRef.3796は2004年にRef.5196と
交替することになっていきました。

出展:https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00319/

96シリーズが誕生したのは1932年。
世界恐慌の真っ只中で、世界が不安定だった時代です。
また、第一次世界大戦と第二次世界大戦のはざまの時期でもあり、
どの国でも帝国主義思想が進んでいました。
あらゆる作戦を企てる中で「時間を知る」ことは必須要素であり、
腕時計はこの時代に“軍用“として普及していきました。


当時のパテック フィリップはまだ腕時計の製作には至っていませんでした。
なぜならパテック フィリップは高品質の懐中時計を生産しており、
腕時計の開発に着手できていなかったからです。
世界恐慌の影響もあり、パテック フィリップは一時経営難に陥ってしまいます。

そんな最中、腕時計開発の遅れを取り戻すようにパテック フィリップは
Ref.96の発表を皮切りに、腕時計カラトラバの製造を開始しました。
経営権はスターン兄弟へと移り、パテック フィリップは
このカラトラバをきっかけに経営難から脱することができたのです。

Ref.96が世界中から愛され、多くの人々から指示を得た理由のひとつは
エレガンスを体現したドレスウォッチであったこと。
前述の通り、当時の腕時計は”軍用”が多く、ドレスウォッチというカテゴリは
ほとんど存在しませんでした。


エレガントなドレスウォッチはそんなに多くは存在しませんでした。
Ref.96は気品あるプロポーションのケースに完成度の高い立体的なインデックス、美しいドフィーヌ針を持ち、当初としては斬新なスタイリングとデザインで人々の心を掴みました。
まさに腕時計にファッションモードの要素が取り入れられる時代が
この頃から始まっていったのです。

そしてRef.96の最も革新的であった点はケースデザイン。
今でこそ当たり前になってきていますが、96モデルは
ラグとケースの構造を一体化して設計、デザインされた最初の腕時計でした。
そのなめらかで艶っぽいシルエットは普遍的であり、
その後多くのメーカーの規範となっていきました。
Ref.96のラグは本体の径が30ミリそこそこのケースサイズに対して
かなり幅広くデザインされているのも特徴。
これにより革ベルトは幅広いものとなり、小振りの時計を男性が着けても違和感のない独特のスタイリングフォルムが多くの支持を得たもう一つの理由でしょう。

その流れを汲む近代のRef.5196もケース径37㎜に対してラグ幅は21㎜と、
やはり広めの設定。
Ref.96を踏襲したスタイリングに仕上がっており、
近年までRef.96の血は受け継がれてきたのです。

この度 惜しまれつつ生産終了が発表された5196。
2022年のパテック フィリップ社からの新作発表では
「96」モデルの後継機は発表されませんでしたが、
いつかまた手に取れる日が来ることを楽しみに待ちたいと思います。

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COLUMNコラム

篠田哲生

最高峰の時計ブランド「パテック フィリップ」の魅力とは何だろうか?
数々の仕事を通じてこのブランドに出会い、魅了され、遂にはユーザーとなったライター、ウォッチディレクターの篠田哲生氏が、自身の目と経験から感じた、"パテック フィリップのこと"について語る。

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