KAMINEスタッフブログ

パイロットウォッチ

腕時計の種類には、ダイバーズウォッチやドレスウォッチなど
さまざまなジャンルがあります。
今回は、豊富なジャンルの中から「パイロットウォッチ」を解説いたします。

●パイロットウォッチとは?

パイロットウォッチとは、その名の通り「パイロットの時計」です。
多くの時計メーカー発売しているパイロットウォッチに明確な定義はありませんが、共通して以下の要素を持っています。

・高い視認性

フライト中は太陽との距離が近いため、コックピットには強い光が差し込みます。
そのためパイロットウォッチは風防ガラスに無反射コーティングを施し、
光の乱反射を防ぐことで視認性を確保する必要があります。
また、夜間も時刻を読み取れるように、針やインデックスに蛍光塗料を塗布し、暗闇での視認性を高めていることも特徴です。

・高い操作性

パイロットウォッチはグローブを着用していても操作しやすいようにリューズやプッシュボタン、回転ベゼルに工夫を施しています。

・高い耐磁性

コックピット内はさまざまな機器があり、磁気を発するものも多いため、
磁気にさらされても精度を保てるように、高い耐磁性を備えています。

・温度、気圧の変化に耐えられる堅牢性

上空では高度の上昇とともに温度や気圧が低下します。
温度や気圧の変化にも耐えられるよう堅牢なケースが採用されています。

また、急上昇や急降下、急反転などの高速運動により強い重力(G)がかかることに加え、狭いコクピット内で腕時計をぶつけてしまうことも多く、
それに耐えられることもパイロットウォッチの要素です。

ドイツには時計ブランド「Sinn」の発案により制定された
パイロットウォッチの規格「DIN8330」があります。

2012年に基礎的な「TESTAF」が完成。
2016年にはTESTAFを更にアップデートし、「DIN8330」とはドイツの工業規格で、現在はまだ時計業界全体に普及しているわけではないですが、
今後DIN8330の規格に沿って制作された時計が増えてくるかもしれません。

●パイロットウォッチの歴史

1903年、アメリカのライト兄弟が人類初飛行を成功させました。
このときに弟のオーヴィルが身に着けていたのは懐中時計でした。

しかし、飛行機の操縦をしながら懐中時計で時間を確認することは困難でした。

当時、多くのパイロットは操縦をしながら時間を確認できる時計を求めたことでしょう。

そして多くのブランドはパイロットたちの想いに答えてきました。

それぞれのブランドのストーリーと共に、歴史に残るパイロットウォッチを紹介します。

~カルティエ~
「サントス」

世界で初めて男性用腕時計を完成させたのは「カルティエ」でした。

飛行家のアルベルト=サントス・デュモンが、友人であるルイ・カルティエに
「飛行中でも操縦桿から手を離さずに時間を確認できる時計が欲しい」と依頼したことで誕生した時計が、世界で初めての腕時計「サントス」です。

当時、腕時計は女性アクセサリーとして着用するブレスレットウォッチや、
懐中時計にベルトを通す金具を着けただけのものが
少数存在していただけでした。

そんな中、「サントス」は全く違うデザインでした。

腕にストラップを装着するためラグがケースと一体化し、
ストラップが隙間なくつながる形状になったのです。

ある意味、世界で初めての腕時計は「パイロットウォッチ」だったと言えるかもしれません。

~ゼニス~
「パイロット」

傑作ムーブメント「エル・プリメロ」で有名なゼニスですが、
エル・プリメロ誕生以前は軍用や航空時計のブランドとして名を馳せていました。

1909年、“航空術の生みの親”ルイ・ブレリオが英仏海峡の横断飛行という世界的快挙を成し遂げました。

この時、彼の腕に巻かれていた腕時計は「ゼニス」のものでした。

ブレリオ氏はお礼状の中で「精度を求めるすべての人にこの時計を大いにお勧めする」とゼニスの精度の高さを評価しています。

パイロットウォッチを製造するブランドは多くありますが、
文字盤に「PILOT」と記載できるのはゼニスだけです。

~ブレゲ~
「タイプ20」

1950年代初頭にフランス国防省は、
空軍用のクロノグラフ腕時計の計画書を作りました。

ブレゲはこの計画に関心を示し、軍でいち早く公式採用されることになるモデルを作り上げます。

1955年にフランス空軍に納入されたツーカウンタークロノグラフ「タイプ20」は1956年から67年まで試験飛行センターで、1960年には海軍航空隊で使用され、パイロットに支給されました。

高級クロノグラフとして軍に採用されたこの時計は
フライバック機構を備えていました。

これは通常のクロノグラフがスタート→ストップ→リセットの順にプッシュボタンを押さなければ次の時間計測に移れないのに対し、
フライバック機構はスタート→リセットのみで次の計測に移ることができる機構です。

飛行機の操縦中に操縦桿から手を離し、何度もプッシュボタンを押すのは難しいため、操作が簡略化できるフライバック機構は軍用品として非常に重宝されました。

●まとめ

いかがでしたでしょうか。

懐中時計が主流であった時代、パイロットたちの要望を受けて作られた「パイロットウォッチ」は、腕時計の誕生と発展に深く関わっていました。

また、パイロットウォッチは“軍用”が根本にあるため、
基本的なデザインは共通しています。
その範囲内で各社が軍への納入を目指すことで、デザインの向上と技術の発展をしてきました。

空を飛ぶことに憧れたパイロットの想いと、それに応えてきた時計ブランド。

パイロットウォッチは高い実用性とともに、
ロマン溢れるストーリーを持っています。

今回紹介させていただいたパイロットウォッチ以外にも、
カミネでは多くのパイロットウォッチを扱っております。

ぜひ、ブランド毎のパイロットウォッチのストーリーを聞きに「カミネ」にお立寄りください。

楽しみにお待ちしております。

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COLUMNコラム

篠田哲生

最高峰の時計ブランド「パテック フィリップ」の魅力とは何だろうか?
数々の仕事を通じてこのブランドに出会い、魅了され、遂にはユーザーとなったライター、ウォッチディレクターの篠田哲生氏が、自身の目と経験から感じた、"パテック フィリップのこと"について語る。

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