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時刻合わせに必須なリューズとは

突然ですが、最もシンプルな機械式腕時計で
どれくらいの部品数が必要か皆さんはご存知でしょうか?

およそですが約130個以上の部品が必要で、それらのパーツを組み合わせてようやく一つの時計が完成します。
もちろんシンプルな時計でそれだけのパーツが必要になってくるので、
カレンダー機能付き、クロノグラフ等複雑な機構になればなるほど、
必要なパーツは当然多くなってきます。

さらに腕に乗るサイズに組み込まれている為
一つ一つのパーツは本当に小さく、繊細です。

「そんな小さなパーツ1個くらいなくたって動くでしょ?」
と思われるかもしれませんが・・・

ダメなんです!!例え小さなネジ1本でもなくなってしまうと、
時計の精度や故障の原因に繋がる恐れがあります。

どんな小さなパーツもそれぞれ非常に重要な役割を果たしている訳ですが、
今回は腕時計に使用されるパーツの中でも比較的大きい部類に入りますでしょうか?「リューズ」についてお話させて頂きます。

この記事は以下の内容でお送りします。
是非興味のあるところだけでも読んでみてくださいね。

①リューズとは
②リューズの種類
③リューズを操作する際の注意点
④リューズの不具合について
⑤日々のメンテナンス
⑥色々なリューズ

①リューズとは

時計が好きな方はもちろん、そうでない方も
「リューズ」とうワード目にしたり聞いた事があるのでは無いでしょうか?

現代におけるリューズとは
文字盤の側面に設置されている突起したパーツの事を指します。

一般的には時計の3時位置に付属しており
時刻や日付を調整する際に使用します。
また、手巻き式の時計の場合はゼンマイを巻くためにも使われます。
リューズの位置に関しては諸説ありますが、
時計を左手につける事を前提とした場合、
右手で操作がしやすいようにではないかといわれています。

そんなリューズですが一体どの様にして生まれたのか少しお話していきたいと思います。

リューズとは「竜頭」のカタカナ読みで、
リュウズと表記されることもあります。
「竜頭」何か急に渋いですよね笑

それもその筈、このリューズという呼び方は日本ならではで、
もともとはお寺の釣鐘(つりがね)をつり下げるための綱を通す部分である
「鈕(ちゅう)」が、日本では「竜頭」と呼ばれていました。

姿が龍に似ていて、よく吼えると言われた「蒲牢(ほろう)」という
中国の伝説中の生き物の頭が装飾としてあしらわれたからです。
まだ時計がなかった頃は、お寺の鐘の音が時計の代わりを果たしていたため、
伝説の「蒲牢」にあやかって、鐘の音が遠くまで良く響いて欲しいという願いがこめられていたのでしょう。

やがて、江戸末から明治にかけて、西洋の文物が入ってくるようになると、
輸入品の懐中時計が日本に入ってきました。
鐘の音の役目もだんだん懐中時計に引き継がれていくのですが、
その懐中時計に紐や鎖を通してつるす部分を、
鐘と同じく時を告げるものをつり下げる部分ということで、
「りゅうず」と呼ぶようになったのではないかと思われます。

ヨーロッパでは「かんむり」を意味する単語が
「りゅうず」を指すことが多いようです。

例えば、「crown (クラウン、英語)」、「couronne (クロンヌ、フランス語)」、「Krone (クローネ、ドイツ語)」。

これらはいずれも「かんむり」を意味します。

是非インターネットの翻訳サイトで「リューズ」と入力してみて下さい。
それぞれの国の言語で「かんむり」を言葉に訳されると思います。

何故、外国では「かんむり」と呼ぶようになったのでしょうか?

発明された当時の時計は大変貴重なものであったこと、
時計の装飾が時計の上部にほどこされていたことが、その理由と考えられます。

「貴重なもの」の「一番上にある丸いもの」ですから、
「かんむり」を連想するのはごく自然なことだったのでしょう。

お気づきでしょうか?この時点では「リューズ」はただの装飾であったり、
首からぶら下げる鎖を通すためのパーツでしか無い事に・・・

身につけられる時計が初めて作られたのは16世紀のドイツといわれています。

リューズの役割は、19世紀半ば近くまで、鎖を通すためと、
時計の上下の判別をするため、にとどまっていたのです。
ねじを回すのも時刻を合わせるのも、時計の背面に専用の鍵を差し込んで行っていた様で現在から考えると、かなり不便なものでした。

1842年、ジャン・アドリアン・フィリップは、ねじ巻き/時刻合わせ用の軸を、それまでの時計の前面や背面から、時計側面に移動させたムーブメント(時計本体の心臓部分のことです)を発明しました。

これは、「リューズ巻き上げ/時刻合わせ機構」と呼ばれ、
現在の機械式腕時計の機構とほぼ同じことができる素晴らしい発明でした。

ひも通し程度の飾りにすぎなかった「りゅうず」は、
このとき初めて時計の内部機構と関わりを持つようになり、
「時計部品」の一部になったのです。

この方式の時計はほどなく主流となり、
ねじを専用の鍵で回す鍵式時計を過去のものにしました。

携行用の時計の主流が、懐中時計から腕時計へと移り、
自動巻時計がポピュラーになり、
さらにはクオーツの時代を迎えて時計の動力が電池となっても、
内部の仕組みを外部から操作する事が出来る非常に重要なパーツなのです。

②リューズの種類

リューズは大きく分けて「引き出し式」と「ねじ込み式」の二種類があります。
前者はほとんどの時計に共通している造りで、
リューズを指でつまんで引き出すことで内部を作動させるものです。
一般的に電池式の時計やシンプルな三針の機械式時計に使われています。

カレンダーのついていない時計は1段階目までしか引き出せないのに対して
カレンダーつきの時計は「カチッ、カチッ」と2段階引き出すことが出来るのが特徴です。
カレンダーなしなら1段の引き出しでそのまま時刻調整ができ、
カレンダーありのものなら

通常ポジション→ゼンマイ巻き上げ

1段階目引き出し→日付調整

2段階目引き出し→時刻調整

と使い分けることになります。

この1段階目の引き出しが微妙な力加減でなかなか慣れないと難しいですよね笑

「ねじ込み式リューズ」に関してはダイバーズウォッチなどで主に使われ、
リューズを時計の内部にねじ込む設計になっているものを指します。
これにより、時計内を密閉し、水やホコリの侵入をふせいでいます。
このタイプのリューズを引き出す時は、ネジのように左(6時方向)に回すと、リューズがせり出し、時刻の調整などが出来るようになります。

時計の浸水経路は、主に裏蓋と操作部分の2箇所になります。

裏蓋からの浸水を防止するために時計の内側にはパッキンと呼ばれる
隙間をふさぐ役割をするゴム製の部品が装着されています。

さらに、一般の時計よりも高い防水性能が求められるダイバーズウォッチでは
裏蓋の締め込み構造に、防水性の高いスクリューバック方式を採用しています。
スクリューバックも裏蓋をケース本体にねじ込むことによって、
隙間をなくし、水の侵入を防ぎます。

操作部分であるボタンやリューズも高い水圧が掛かったり、
水中で操作したりすると浸水の原因になってしまいます。

こういった理由で、ダイバーズウォッチのボタンやリューズには
水中での誤操作を防止し、浸水に強いねじ込み式をリューズに採用しています。

③リューズを操作する際の注意点

機械式の時計は冒頭でもご説明させて頂いた通り数百個~数千個のパーツからなる非常に繊細な作りとなっています。
落としたりして強い衝撃が加えられたり、水浸による不具合の他にも誤った操作で機械が壊れてしまう恐れあるので是非注意して頂きたいと思い、
よくやってしまいがちな誤操作をいくつかご紹介させて頂きます。

・ゼンマイの巻き上げ
手巻き式時計の場合、“巻き止まり”というものが存在します。
ゼンマイの巻き上げはリューズで行われますが、
ずっと回し続けていると次第に重みが加わるようになります。
最終的には引っかかるような感覚と共にそれ以上巻けなくなるのですが、
その“巻き止まり”を超えてリューズを動かし続けると、
内部のゼンマイが切れて故障してしまう恐れがあるので注意する必要があります。 あまり早く回転させると内部の歯車機構も猛回転。
過度な摩擦が生まれ、摩耗や損傷の危険性もあります。
時計にとって最適なスピードはあくまで目安ですが、「1秒間に1回転」が無理のない安全な速度なので、リューズを回す際は、この速度を目安にゆっくり回すよう意識して下さい。

・カレンダー調整
夜中にカレンダーを操作することは避けましょう!
メーカーによって具体的な時間帯の範囲は異なりますが、20~4時の間は日送り車という歯車が作動する時間帯とされています。
この間に外部からの操作が加わると、歯車の嚙み合わせに負荷がかかり故障の原因になる可能性があります。

・締め忘れ、締め方(ねじ込み式)
ねじ込み式を採用している時計はリューズが締まっている状態でないと防水性が確保されません。
うっかり締め忘れたまま使用してしまうと内部に湿気や水分が侵入してしまう可能性があります。
また、リューズ本体もケースからはみ出ている状態ですので、
引っかけたりぶつけたりして破損させてしまう危険性もあります。

使用後は押し込みながらリューズを締めていくのですが、
力任せに無理矢理ねじ込んだり、真っ直ぐ押し込めていないとリューズのネジ溝が削れたり潰れてしまいます。

ネジ溝が摩耗してしまうと防水性能も低下してしまいますし、
最悪の場合ねじ込みが一切できない状態になってしまうこともあります。

少しでも固いと感じたらもう一度やり直してみましょう。

また、時計を着用したままでのリューズ操作も余計な力が入り、
破損させてしまう可能性があるのでお勧めしません。

腕から外した状態でリューズ操作を行うよう心がけましょう。

リューズは外装部品であり消耗品になります。

経年劣化で必ず交換がやってくる時期はきますが、
使い方次第で寿命を延ばすことは可能なので是非試してみてください。

④リューズの不具合について

リューズは最も直接的な使用機会が多い為、
それだけ破損するリスクも高くなるパーツです。
どんな不具合があるのかいくつか挙げてみます。

長期間の使用や油の劣化、油切れが部品を摩耗させ、
リューズの劣化を引き起こします。それに気付かず、
突如リューズが抜け落ちたり動かなくなったりすることもあります。

リューズを回した際に空回りしているような感覚を覚えた時は、
内部の歯車や部品が経年の劣化により破損してしまってるか、
中の油が切れている可能性が考えられます。
反対に、リューズの動きが重く感じる場合も、先程と同じくパーツの摩耗や破損、あるいは錆が発生している場合があります。

⑤日々のメンテナンス

上記の様な事をなるべく防ぐために日々のメンテナンスも重要です。
もちろん弊社にお持ち込み頂ければ専門のスタッフがケアさせて頂きますが、
ご家庭で簡単に出来るメンテナンスとしては、
爪楊枝(キズを付けない程度に)や綿棒で溜まっている汚れを取り除きます。
100円ショップでも売られている、先の尖ったメイク綿棒を使うと汚れも取りやすくお勧めです。

ただ、汚れがなかなか取れないからといって
無理に強く擦ったりは決してしないで下さい。

優しくソフトにがポイントです。

汚れを落としきれない場合はサビや腐食の可能性があります。
無理に除去せず、ご相談ください。

⑥色々なリューズ

時計にたくさん種類が有る様にリューズにもたくさんの種類があります。
操作がしやすい様にインパクトのある大きな物や、
反対になるべく全体の仕上がりがスッキリする様に小さい物、
天敵である水の侵入を防ぐ為にと取り付けられたリューズガード等。

最後に色々なリューズをご紹介させて頂きます。

カルティエ パシャ

カルティエ バロンブルー

パネライ ルミノール

ピアジェ ライムライトガラ

今回は「リューズ」についてお話させて頂きました。如何でしたでしょうか?

リューズの歴史と非常に重要なパーツという事がお分かり頂けたと思います。

また、各ブランドならではの工夫されたデザイン等もあるので、
是非お時計選びのポイントの1つにしてみても面白いかもしれませんね。

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COLUMNコラム

篠田哲生

最高峰の時計ブランド「パテック フィリップ」の魅力とは何だろうか?
数々の仕事を通じてこのブランドに出会い、魅了され、遂にはユーザーとなったライター、ウォッチディレクターの篠田哲生氏が、自身の目と経験から感じた、"パテック フィリップのこと"について語る。

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