Patek Philippe Floorブログ

時計製造の進化と伝統的なデザイン、複雑機構を持ちながら実に個性的で使いやすいRef.5940

昭和の和英造語で“トランジスタグラマー”という言葉がありました。
小柄ながら実に魅力的な女性という事なのでしょうが、
時計にもそう感じるものを見かけることがよくあります。
小ぶりながらぎっしりと機械の詰まった時計は
好事家に人気のパターンとも言えます。
時計業界においても薄型化、小型化というキーワードは
昔からある普遍的なテーマの一つです。

元々、19世紀以降に懐中時計をポケットから出す、
風防を保護している蓋を開けるなどの手間を省きたいという理由から
開発が進められたのが腕時計の起源。

多くのパーツでムーブメントが構成されている時計を
小型化するのは当時の技術では難しく、
本格的に普及が進んだのは20世紀に入ってからの事でした。

その小型化したものを手首に収まりよくするために
薄型化を実現するのに、更に時間を要したであろうと容易に想像できます。

100年以上前から賢人たちは腕時計の薄型化、
小型化に頭を悩ませ続けてきたのです。

現在までに時計製造の技術は随分進化しました。
そして複雑な機構を備えた時計の薄型化も実現しています。

写真のパテック フィリップ5940は

2012年に発表された薄型永久カレンダー。
その中でも数少ないクッション型ケースのエボニーブラック・ダイヤル。

クッション型、オーバル型などのケース形状は

柔らか味を持つデザインとして古くから人気で、
言うなれば、ノーチラスやアクアノートのフォルムの起源も
このクッションケースからきているのがわかります。

この5940に搭載されているムーブメントは伝統的キャリバー 240 Q。
パテック フィリップのコンプリケーション工房で製作されている
代表的キャリバーのひとつ。

部品総数275個、更に自動巻であるにも関わらず厚さはなんと3.88㎜!

1977年に発表され、このキャリバーの基礎にもなっている
キャリバー 240の厚さが2.53㎜であることから、
永久カレンダー機構に残されたスペースは、1.35 mm。

そのわずかなスペースに閏年を含めた 向こう西暦2100年まで
調整不要の複雑機構、永久カレンダーを搭載した
パテック フィリップの技術力はまさに経験と博識と歴史があってのこと。

複雑機構の中でも最も実用的な機能の一つである
永久カレンダーは、昔から高い人気を集めており、
パテック フィリップを代表する複雑機構の一つです。

更にムーンフェイズにおいては122年45日で
たった1日の誤差しか発生しないという高精度。

先人たちのたゆまぬ研究と開発努力のおかげで
時計のムーブメントはここまで進化したのです。

その薄型でシャープなケースに打って変わって
文字盤は柔らかな印象を覚えます。

丸みのあるリーフ針にブレゲ文字のアプライド・インデックス、
インダイヤルの手書き感ある書体は、
程よい装飾で決してシンプルデザインで終わらせないところが
パテック フィリップのこだわりを感じます。

丸型でもなく角型でもなく、製造に手間のかかるこの
クッション型ケースの数は少なく、
グランド・コンプリケーションになると更に減少します。

2010年に薄型シングルプッシュボタン・スプリット秒針クロノグラフ5950モデルのケース型に採用されたことで話題を集めました。

現行品で純粋なクッションケースは
ゴンドーロ・コレクションの一部でしか採用されていないため、
パテック フィリップの中では稀少なケースのスタイルと言えます。

1910年代頃からフランスをはじめアメリカなどでも流行した
アールデコデザインから影響を受けているスタイリングでもあり、
日本の時計屋さんたちは古くはこの形を
「三味胴」(シャミドウ)と呼んだりしました。
三味線の胴の部分の形をしているからです。

パテック フィリップの製造するこのクッションケースは
工房でゴールド素材を高圧プレスによる冷間鍛造という
伝統的な製法により製造され、その後多数の切削工程を経たのち、
完全な手作業によるミラー・ポリッシュ仕上げが施される
大変な手間の工程となります。

ラグから本体に至るシームレスに繋がるケースの美しさは、
映り込みも含め、目を見張ります。

時計製造の進化と伝統的なデザイン、
複雑機構を持ちながら実に個性的で使いやすいグランド・コンプリケーション、
それがこのRef.5940なのです。

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TEL:078-321-0039 営業時間10:30~19:30

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COLUMNコラム

篠田哲生

最高峰の時計ブランド「パテック フィリップ」の魅力とは何だろうか?
数々の仕事を通じてこのブランドに出会い、魅了され、遂にはユーザーとなったライター、ウォッチディレクターの篠田哲生氏が、自身の目と経験から感じた、"パテック フィリップのこと"について語る。

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